研究概要 |
嵩高いアダマンチル基やt-ブチル基が二つ結合したテトラチオラン(1)をジメチルジオキシランで酸化したところ,ジチイランオキシド(2),チオケトン(3),スルフィン(4)が得られた.本反応の徹底追究により,次の事実を解明した.1)酸化反応の中間体であるテトラチオラン2-オキシド(5)及びテトラチオラン2,3-ジオキシド(6)の単離に成功した.6は,α-ジスルホキシドとして初めて単離されたものである.2)5と6はいずれも溶液中室温で分解し,それぞれ3と2を与える.3)5と6の分解により生成した活性種″S_2O″がジエンにより捕獲され1,2-ジチイン1-オキシドを与える. ジ(1-アダマンチル)アセチレンと単体硫黄の反応より得たl,2-ジチエット(7)がシス位に嵩高いアダマンチル基を持つことに着目し,この立体化学を保持したアルケンに導く検討を行った.本反応では中間体で異性化が起こるため,トランス位にアダマンチル基を持つ1,2-ビスメチルチオエテン(8)が得られた.また,各種反応を行ったところ,環が拡大した1,3-ジチオール誘導体(9)と開環して生成したα-チオイミン(10)が得られた.以上のことより,四員環構造を採りうる組み合わせは,硫黄原子が二つの場合に限定され,硫黄と窒素原子の組み合わせでは開環するとの結論を得た.
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