研究概要 |
昨年度の研究において、従来の立体保護基では安定に合成し得なかったアンチモンおよびビスマス原子間二重結合化合物について、申請者らが独自に開発した新規な立体保護基である2,4,6-トリス[ビス(トリメチルシリル)メチル]フェニル基(以下Tbt基と略)を活用した速度論的安定化の手法により合成を試みた結果、目的の高周期15族二重結合化合物であるジスチベン[1;TbtSb=SbTbt]およびジビスムテン[2;TbtBi=BiTbt]を安定な結晶として合成単離することに成功した。本年度の研究では、これら新規な二重結合化合物の未知なる構造・性質の解明を行うことを目的として研究を行った。 ジスチベン1およびジビスムデン2のX線結晶解析および紫外可視、ラマンスペクトル、メスバウアースペクトル等の各種スペクトル測定を行い、その構造を解明した。また、理論計算を行い構造化学的な予測値と実際の測定値との比較検討を詳細に行い、窒素からビスマスまで15族元素全体を通した二重結合の構造とその構成元素の周期との関係を明らかにした。 さらに、高周期元素間二重結合の未知なる反応性の解明を目的として、1および2の基本的な反応について検討を行い、結晶相酸化反応、熱反応によるサーモクロミズムなどの興味深い反応性を明らかにした。 また、ジスチベン1の前駆体である1,3,5-トリセレナ-2,4,6-トリスチバンの脱セレン化反応をイソプレン共存下で行ったところ、ナイトレンのアンチモン類縁体であるスチビニデン3[TbtSb:]ガ発生し、イソプレンとの[1+4]付加体である3-スチボレン4が生成した。捕捉体4の熱反応を行ったところ、レトロ[1+4]付加環化反応により再生したスチビニデン3が2量化して生成したと考えられる1が得られた。本反応はジスチベンの新規合成法としても興味深い。
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