研究概要 |
含珪素高分子は古くからセラミックスの前駆体やシリコンオイルなどに用いられてきたが、近年、柔軟な主鎖骨格を有する液晶性高分子やσ電子共役系導電性高分子といった珪素の結合や電子状態を利用した新しいタイプの機能材料への応用にも展開が期待されつつある。しかしながら、これまでの含珪素高分子を用いた材料開発では、もっぱらその化学構造による分子設計が主であり、その立体規則性まで深く検討した報告例は全くなかった。本研究では、立体規則性あるいは光学活性含珪素高分子を合成することを目的とし、光学活性モノマーを合成し、それらの重合反応を検討した。この研究は、新しい材料開発という観点からだけでなく、光学活性モノマーを得る過程で、メンチルオキシシランなどの光学活性珪素化合物を出発原料とし、その光学純度を維持するような経路を珪素独自の反応性を利用して設計するという合成化学的見地からも興味深いものである。 光学活性アリルシランを合成し、その重付加を検討した。得られたポリマーは、モノマーの光学純度を反映したアイソタクチシチーを示し、この重付加反応が立体選択的に進行することを明らかにした(Polym.J.,1998,30,1001.)。 光学純度がほぼ100%の光学活性ビニルシロキサンの合成に成功し、その重付加反応により、アイソタクチックかつ光学活性なポリカルボシロキサンの合成に初めて成功した(Macromolecules,1998,31,5592.)。このとき副生する、光学活性な環状カルボシランの開環重合を行うと、アイソタクチックかつ光学活性で、高分子量なポリカルボシロキサンの合成に成功した(Macromolecules,1999,32,548.)。 また、水分子という簡単な化合物とジシリルベンゼンからの脱水素カップリング反応により、結晶性の高いポリカルボシロキサンを得ることにも成功している(Macromolecules,in press.)。
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