本研究では、ケイ素系化合物の構造と反応性に関して理論化学的な見地から以下の研究を行った。 ベンゾジシラシクロブテンの開環によって生成するベンゾジシラブタジエンとアセチレン分子の間にディールス・アルダー型の反応が極めて低い活性化エネルギーで起こり、Si-C結合が生成してアセチレンの3重結合が一部切れることを理論的に予言した。この反応の律速は、前半の開環反応にある。また中間体であるベンゾジシラブタジエンは実験的に観測されていないが、理論計算から。また、シリコンクラスレート化合物は、高い対称性を有するシリコンクラスターが面を共有することにより3次元網目構造を形成している。シリコンクラスレート化合物はナトリウムやバリウムを取り込むことにより約4Kで超伝導を示す。Si_<20>およびSi_<24>シリコンクラスターの振電相互作用とヤーン・テラー効果に着目し、超伝導性との関係を考察した。その結果、Si_<20>クラスターにおける振動数の最も低いモードがヤーン・テラー効果ひいては超伝導に深く関係していることが分かった。
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