研究概要 |
リン上に置換活性なOAr基を有する鉄-ホスファイト錯体[Cp(CO)_2Fe{P(OAr)_3}]PF_6(OAr=OPh,o-OC_6H_4O/2)に対し、o-HYC_6H_4OH(Y=HN,MeN,O)および塩基を反応させることによって、メタラホスホランCp(CO)_2Fe{P(OC_6H_4Y)(OC_6H_4Z)}(1a,Y=Z=NH;1b,Y=Z=NMe;2a,Y=O,Z=NH;2b,Y=O,Z=NMe;3,Y=Z=O)を合成し、収率良く単離することに成功した。ここで得られたメタラホスホラン1b及び2bのX線結晶構造解析により、ホスホランフラグメントは遷移金属原子に対して、そのapical方向の超原子価(hypervalent)結合のo^*軌道を用いてπ-acceptorとして働くことがわかった。 錯体1b、2b、および3は、LDA続いてMeIとの反応によりホスホラン部分が鉄からCp環に転位した錯体{η^5-C_5H_4P(OC_6H_4Y)(OC_6H_4Z)}(CO)_2FeMe(4,5,6)を与えることが各種スペクトル及びX線結晶構造解析による検討から明かとなった。この反応においては、まずCp環のプロトンがLDAによって引き抜かれ、こうして生じたCp環上のカルボアニオンがリン原子を求核攻撃することによって転位反応が進行し、その中間状態としてリンが配位数をさらに拡張した6配位遷移状態を経由すると考えられる。この反応は超原子価化合物の転位反応の初めての例である。
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