本研究では、インターエレメント結合の本質を解明し、自己集合単分子膜の形成過程を明確にすると共に、インターエレメント結合により形成されるインターフェースの高次機能化を目的としている。本年度に得られた研究成果について、以下に要約する。 1)アルキル鎖内にヘテロ原子を導入したイオン認識能を有する機能性有機界面の構築を目的として、分子内にポリエーテル鎖を有するテトラチアフルバレン(TTF)ポリオキシテトラチオール誘導体を合成し、単分子膜および積層膜の形成とその電気化学的挙動ついて検討した。その結果、サイクリックボルタンメトリーによる多重走査を行ったところ、非常に興味あることに、ポリエーテル鎖を含む積層膜修飾電極の方がアルキル鎖のみの積層膜修飾電極より安定であることが判明した。また、積層膜の形成がカチオン種により、大きく影響されることが分かった。さらに、ポリオキシテトラチオール単分子膜の空間部がカチオン認識能を有していることが判明した。 2)生体内電子伝達系に深く関与しているアントラキノン骨格に注目し、水素結合を介しての界面電子移動に関する基礎的知見を得るため、ポリオキシジチオール自己集合単分子膜の形成を試み、自己集合単分子膜と溶液内化学種との水素結合認識を伴う界面電子移動過程について検討した。その結果、水素結合能を有する溶液内酸化還元種(例えば、フェロセンカルボン酸)と自己集合単分子膜のアントラキノンとの界面電子移動が、水素結合によって制御できることが判明した。
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