研究概要 |
平成9年度においてはNAD分解酵素であるリンパ球表面抗原CD38を用いて、この膜貫通タンパク質とガングリオシドとの相互作用を細胞レベルで解析した。その結果、細胞の表面においても糖鎖構造に依存してガングリオシドとCD38が相互作用することを明らかにした。そこで平成10年度においてはガングリオシドにより[1]CD38と他のタンパク質分子との相互作用が変化するか否か、[2]CD38の膜上での挙動が変化するか否か、の2点を検討した。また相互作用を分子レベルで解明するために平成9年度に引き続きCD38とガングリオシドとの結晶化の検討を行った。[1]HL60細胞に抗CD38モノクローナル抗体を作用させると細胞内のタンパク質(cbl,HS-1,syk)のチロシン残基がリン酸化される。この反応は抗CD38モノクローナル抗体のFc部分がIgG-Fcレセプター(FcγR)に作用するためである。(a)抗CD38モノクローナル抗体を作用させた場合のチロシンリン酸化反応にはGT1bによる顕著な差異は認められなかった。このことからGT1bはCD38と抗CD38モノクローナル抗体との相互作用には影響を与えないことが強く示唆された。(b)GT1bはRA-HL60細胞のFcγRの架橋刺激に対する応答性を変化させた。現在GT1bの効果がFcγRに対する直接のものか、CD38を介したものかであるかをさらに検討中である。[2]RA-HL60細胞を1%Triton X100により可溶化した後、ショ糖密度勾配超遠心の方法を用いてマイクロドメインを分離した。抗CD38モノクローナル抗体の刺激によりCD38のマイクロドメインへの移行が促進された。刺激時のマイクロドメインへの局在はGT1b処理により影響を受けなかったが、非刺激時のCD38のマイクロドメインへの局在はGT1b処理により解除された。
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