近年、低次元半導体の研究が盛んに行われている。しかし、特に半導体微粒子は、光のスポット径内に存在する微粒子の個数が一般的に多く、それらすべての情報が重畳してしまった信号しか得られず、こうした低次元物質を研究する上で常に問題となっている。そのような中で、近接場分光法は、これまで粒径分布によって観測不可能だった個々の微粒子の物性を直接調べることが可能な方法であると考え、研究を進めている。 我々は、走査型トンネル顕微鏡(STM)と原子間力顕微鏡(AFM)の機能を併せ持つ装置を改造して近接場分光装置を構築した。測定は、illumination mode及びcollection modeの両方が可能である。ファイバープローブの高さ制御は、shear forceを検知して行っている。本装置の主な特徴を、以下に挙げる。冷却は、従来よく行われているように測定系全体を冷媒に浸けるような大がかりな方法ではなく、試料ステージのみを熱伝導で冷却する方法で行っている。そのため冷却は簡便に行える。(2)温度はヒータにより0.5Kの安定性で制御でき、現状では130Kまで冷却できる。(3)測定系全体を冷媒に浸けるシステムに比べて試料やファイバープローブの取り付けが容易である。(4)真空槽に前室を設け、ここを通して試料の取り替えが冷却中にも行える。(5)対物レンズを通して試料表面の画像をCCDカメラで受け、モニター上に映し出せるようにし、ファイバープローブを試料表面へアプローチする際に調整しやすくなっている。 標準サンプルを用いた評価した結果、空間分解能は200nm程度まで測定可能であることを確認した。以上より、本測定装置はほぼ使用可能となり、今後物性測定を行っていく予定である。
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