研究概要 |
ピコ秒近接場顕微分光システムを用いた有機固体中の局所光化学反応や形態変化、包接により形成される分子複合体の局所光物性に関する研究を行った。 アシトラセン微結晶の局所光退色とトポグラフィ一変化については、チタンサファイアレーザーの第二高調波(390nm,200fs)をファイバープローブに導入して励起光とし、約100nmの空間分解能で照射前後の蛍光スペクトルと蛍光減衰波形を測定した。その結果、光化学反応によって一部のアントラセンがアントラキノンに酸化され、それがアントラセンの蛍光を消光し、蛍光強度と減衰時間を減少させることが分かった。さらに励起光を照射するとトポグラフィーに変化が見られ、光吸収したアシトラキノンが無輻射失活して効率よく熱を発生し、アントラセン結晶が昇華することを明らかにした。 包接現象を示す化合物として知られるアントラセンモノレゾルシン誘導体の真空蒸着膜に、ゲスト分子として安息香酸メチルを含有させ、蛍光スペクトルの変化や蛍光寿命を解析した。モノマー蛍光とエキシマー蛍光の強度比の分布から、相対的なゲスト分子濃度の空間不均一性を調べ、膜中にゲスト分子が取り込まれていくメカニズムについて考察した。また、エキシマー蛍光のピーク波長や蛍光寿命にも分布が見られることから、ゲスト分子ドープ後にはアントラセンモノレゾルシン誘導体の分子同士の重なりや配向の不均一性が現れることを明らかにした。
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