今後のナノメータ・スケールでの磁気特性の測定のために、ナノメータ・スケールの空間分解能を有するトンネル発光の磁気光学特性の測定を用いたナノスケール磁気特性解析を目的とした。この測定を、空気中、真空中、液体中など種々の環境下で実現できることは、測定できる試料、条件の範囲を広げることに役立つと言える。そこで、本年度は、磁気光学測定の装置の製作、液体中でのトンネル発光スペクトルの測定、トンネル発光スペクトルの理論について研究を行った。 トンネル発光の磁気光学測定を行うには微弱光を精度よく測定しなければならないので、従来用いていたトンネル発光STMを改良したSTM装置を製作した。このSTMでは、従来のものに較べてトンネル発光の集光立体角を5倍程度に増大するようにした。またトンネル発光の円偏光度がSTM測定と同時に測定できるようにした。真空チャンバーの外から、試料およびSTM探針の交換、また試料の位置調整が約1cmの範囲で位置分解能約10nmでできるように設計した。巨大磁気抵抗効果を示す物質などの局所磁気特性を調べるために、融点の高い磁性金属の薄膜作製用電子ビーム加熱蒸着装置を製作した。また、通常の抵抗加熱蒸着装置および半導体膜などのための分子ビーム蒸着装置も設置した。これらの作製装置はSTM測定真空チャンバーとつなげて、作製した試料を大気にさらさずにSTM装置のチャンバーへ移送できるようにした。またトンネル発光の理論解析を行い、微粒子サイズ依存性、トンネルギャップ媒質依存性を求めた。
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