研究課題/領域番号 |
10135225
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
岩田 耕一 大阪府立大学, 工学部, 教授 (20081242)
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研究分担者 |
菊田 久雄 大阪府立大学, 工学部, 助手 (10214743)
中野 隆志 通商産業省, 工業技術院・産業領域融合研究所, 研究員
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キーワード | 近接場光学顕微鏡 / 熱応力 / 力検出 / 光励起力 / 振動解析 |
研究概要 |
本年度は、原子間力顕微鏡(AFM)の探針を使って試料探針間に光が介在することで発生する力に注目し、これを正確に検出する方法について検討を行った。とくにAFMの探針をエバネッセント場内に持ち込んだときに発生するカンチレバーの熱変形について考察を行った。このカンチレバーの熱変形は探針に作用する微小力の検出を妨げている。前年度に、解析の容易さから近似的な境界条件を与えて振動特性を算出したが、一部で実際の現象と一致しない問題を残した。本年度は、熱変形の程度を評価する目的で、より厳密な熱応力と力学的な振動解析を行い、実際の現象に近い振動モデルを構築した。 金属コートされた2層構造のカンチレバーの大気中の振動を解析的および実験的に調べたところ、共振周波数においても振動のピークが現れなかった。熱応力による振動は共振周波数より十分低い周波数で既に減衰が始まり、その減衰率は-30dB/decであることが分かった。これは従来、1次系または2次系であろうと推測されてきた減衰の様子と異なり、熱応力による挙動が複雑であることを示している。一方、実験結果から光の吸収量を見積もると、10mWの励起光に対し1nW程度の熱吸収があることが分かった。また、真空中を想定した低減衰のシミュレーションにおいては、鋭い共振ピークが現れた。しかし、力に対する振動振幅も同時に大きくなり、共振周波数での微小力を検出する妨げにはならないことが結論づけられた。 金属薄膜がコートされていないマイクロカンチレバーを用いてレバー変位を試みたところ、微小力を検出するのに充分な出力信号を得ることができた。金属膜がない場合は、2層構造でないので、熱変形の影響がほとんど無く、理論的な測定限界に近いレベルまでレバー変位を検出できることが分かった。
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