研究概要 |
室温と低温の2点でAl-Pd-Mn等の正二十面体相の散漫散乱分布を求めた結果,次のような特徴があることがわかった。実験結果は生のデータから,中心部をガウス関数で近似したブラッグ散乱を取り去ることにより得た。(1)反射点によらずほぼ同じ形である。(2)室温以下ではあまり温度依存性がない。(3)その散漫散乱の概形はほぼ対称的で,L方向に短く,T方向にのびた菱形状である。(4)その散漫散乱のq依存性はほぼq^<-2>に比例する。 これらの散漫散乱分布の性質は熱散漫散乱等では説明できず,欠陥のまわりに生じる歪み場を弾性近似してえられるHuang散乱によく似ていることから,いくつかの欠陥を仮定し,このHuang散乱を不純物は正二十面体対称性を持って分布するとして,1つの計算結果に120の対称操作を施して,計算結果の散漫散乱の和を求めた結果,正二十面体相中のHuang散乱には立方晶中において観測されるHuang散乱と同じで3種類の独立なものがあり,現実の欠陥による散漫散乱はこの3種のHuang散乱各々では説明できないことがわかった。実験で求められた散漫散乱分布との比較は定性的には一致する。特にランダムフェイゾンもこの図のような置換型欠陥の一種と考えられるので,ランダムフェイゾンのような欠陥がAl-Pd-MnやAl-Cu-Fe等の正二十面体相に一番多く入っているbのと思われる。しかし,現実の散漫散乱分布図はHuang散乱だけでは説明できず,今後の検討を要する。 またAl-Cu-Fe試料固有の散漫散乱分布のL方向(動径方向)が,ブラッグ反射に対して対称的でないのは,点欠陥が存在しているためと考えられる。 特に高温で顕著に差が見ることができるので,酸化や試料の変性を防止して,X線回折によるさらなる研究を実行するため現在、試料作成と実験装債改善に取り組んでいるところである。
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