数ナノメートル程度の粒径をもつ超微粒子(ナノ粒子)における相変態および相平衡は、対応するバルク材料のそれらとは著しく異なる場合がしばしばある。ナノ粒子における融点降下はそのよく知られた例である。しかし、合金ナノ粒子における相変態や相平衡に関する研究は少ない。最近、当グループでは、ナノ粒子に溶質原子を蒸着すると、極めて急速な合金化が起こり、その結果、固溶体ナノ粒子や化合物ナノ粒子が生成することを電子顕微鏡(電顕)内その場観察法によって明らかにしている。本研究では、こうした手法を利用してAu-Sn合金ナノ粒子の相平衡を電顕法によってその場観察し、バルク材料の相平衡と比較した。その結果、(1)合金ナノ粒子においては、対応するバルク材料に比べて固溶限が著しく増大すること、(2)バルク材料での二相領域に相当する組成の合金ナノ粒子においては、明瞭な二相共存組織は認められず、粒子内部の組織はサブナノスケールにまで微細化されたアモルファスと類似した構造をとるが明らかにされた。特に、バルク材料の二相領域に相当する組成をもつ合金ナノ粒子においては、格子軟化のために固溶体や化合物の構造が局所的にゆらいだ、いわば原子の化学的な環境を優先した構造が発現しうると考えられる。
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