研究概要 |
本研究では、放射線照射に伴う合金の不規則化と析出粒子の溶解過程の速度論を理論ならびに実験の両面から検討を行っている。理論面では主にモンテカルロ法に基づく相変態過程のモデルを構築して、その計算機プログラムを開発した。一方、実験では今年度はNi基金属間化合物の基本形であるNi3Al合金(L12規則構造)に着目して、その1MeV電子照射にともなう不規則化過程を、最近日本で開発された高感度記録媒体であるイメージングプレートを利用した電子回折実験により定量的に検討を行った。以下に、得られた成果をまとめて記す。 (1) 20×20×20のfcc格子からなる系を想定して、照射に伴う不規則化と熱的な原子の再配列を同時に計算する計算機プログラムを開発した。現在、様々な条件を想定してL12構造やD1a構造の照射による構造変化の計算を進めている。特に照射によって導入される不均質な構造が、不規則化や再規則化にどのような影響を与えるかに着目して解析を進めている。 (2) L12構造を有するNi3Al単結晶試料に、140,198,ならびに300Kで1MeV電子を照射して、その不規則化過程を電子回折により観察した。140ならびに198Kでは照射とともに急速に不規則化が進行して、約0.9dpaを過ぎるとほぼ完全な不規則状態となった。その速度定数から不規則化の断面積を見積もると、原子のはじき出し断面積と同程度の値が得られ、不規則化が単純な原子のはじき出しによって進行することが示された。一方、室温で照射を行うと、不規則化は進むが完全な不規則状態には至らず、規則度Sは約0.4で定常状態となった。 (3) 初期の規則度Soが異なるNi3Al合金を室温で照射すると、So>0.4の場合は照射とともに規則度は低下してSが約0.4で定常に達するのに対して、So<0.4の場合はそれとは異なるS=0.2で定常になることが明らかになった。
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