2相ステンレス鋼ならびに2相チタン合金を用いて、それらの母相の結晶粒界の三重線とその近傍に核生成する第2相の形態および結晶学的特徴に関して研究を行った。その結果、結晶系が異なるいずれの合金においても共通した特徴があることが明らかとなった。すなわち、粒界三重点(線)およびその近傍への核生成では、3通りに形態が分類可能である。そして、結晶学的には、析出相が接する母相の3つの粒との整合性が重要であることを確認した。特に、粒界三重線上への核生成では粒界三重線を構成する2つ以上の粒界面との整合性が重要であることを見出した。さらに、粒界三重点(線)として観察される粒界エッジの方向も、析出相の結晶方位の決定に大きな影響を及ぼすことを示唆するデータが得られた。一方、粒界面上への核生成では、隣接する母相結晶粒の一つとの整合性が重要となる。 さらに、3次元の単純な幾何学モデルが異相界面構造の視覚化に非常に役立つことを見出した。現在、このシミュレーション方法を改良し、結晶学的方位関係をinputすることにより、2相間の原子マッチングの良い界面を探し出すことが可能となった。そして、析出初期の、特定の方位関係を満足するような析出相の界面構造について、実験結果と良く対応することが確認された。この方法の大きな利点として、析出相が特定の方位関係からずれており(粒界析出相や粗大化した析出相などにしばしば観察される)、しかも、異相界面の直接観察が困難な場合に、界面構造が視覚化できる、という点があげられる。
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