カーボンブラック・アルミナゲルアロイ薄膜の電気抵抗値は、グラフト鎖の良溶媒蒸気中で著しく低下し、新規のガスセンサーとして機能する。そこで、本研究では、 (1)カーボンブラック・アルミナゲルアロイ表面の多孔化などによる、応答スピードの向上、 (2)カーボンブラック・アルミナゲルアロイのガス応答機構の解明、 (3)カーボンブラック・アルミナゲルアロイ薄膜による溶液中の有機物のセンシング、および(4)酵素固定化ポリマーをグラフトしたカーボンブラックを組み込んだアルミナアロイゲルの合成と、得られた複合体のグルコースセンサーとしての可能性について予備的な検討を行った。 その結果、以下の成果が得られた。 1. 粒子径が大きく、しかも比表面積の大きなカーボンブラックを用いると、カーボンブラック・アルミナゲルアロイ抵抗体の水蒸気応答速度が著しく大きくなることが分かった。 2. カーボンブラック・アルミナゲルアロイのガスセンシングにグラフト鎖のカルボニル基とアルミナゲルの水酸基との間で形成される水素結合が重要な役割を演じていることが、乾燥空気中と水蒸気中における赤外吸収スペクトルの解析から明らかにした。 3. カーボンブラック・アルミナゲルアロイの電気抵抗値は、ヘキサンやジエチルエーテル中へ溶解した水やアルコールへ浸すと著しく低下し、しかも乾燥ヘキサン中へ戻すと、初期抵抗値へ戻り、新規の溶液センサーとして機能することが分かった。また、溶質濃度と電気抵抗値に良い相関関係が認められ、濃度計としても応用できることを指摘した。 4. グラフト鎖へグルコースオキシダーゼ(GOD)を固定化したカーボンブラックが合成でき、この様なカーボンブラックの存在下で、アルミニウムイソプロポキシドのゾル-ゲル反応を行うと、GODを組み込んだアルミナアロイゲルが得られることが分かった。しかしながら、この様な抵抗体にはグルコースへの応答性は認められなかった。
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