研究概要 |
これまでに、スルホン基をイオン交換基として持つ陽イオン交換樹脂に交換するカチオンの種類を変えることによって、それを炭化して得られる樹脂の細孔径を0.38〜0.45nmの範囲で制御することに成功した。本年度はカルボキシル基をイオン交換基として持つ弱酸性の陽イオン交換樹脂についても同様の実験を行い、カチオン種が炭化後の樹脂の細孔構造に与える影響を検討した。また、金属が高分散している炭化後の樹脂について、NOの分解除去剤として用い、その活性を検討した。 用いた樹脂は、カルボキシル基を持つメタクリル酸型とアクリル酸型のイオン交換樹脂で、ともに多価のイオンで交換すると樹脂は炭化中に溶融することなく、炭化後の樹脂は0.5nm以上の大きな細孔が発達しており、弱酸性のイオン交換樹脂についてもピラー効果があることがわかった。また、炭化樹脂について、酸処理を施して金属を取り除いたところ、新たに細孔が形成される樹脂と細孔がつぶれて消失してしまう樹脂があり、試料によって金属が細孔形成に果たす役割が異なることがわかった。 Ni^<2+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>で交換した樹脂の炭化物をNOの分解除去剤として用いたところ、Ni^<2+>で交換した樹脂の500℃炭化物は、300℃という低温で3時間以上にわたってNOを100%除去できた上にそのほとんどが窒素に転換されており、NOの分解除去剤として非常に高い活性を持つことがわかった。また、活性を失った樹脂は、He中500℃で処理することにより、再び活性を取り戻した。XPSおよびMRDの分析結果より、Niが酸化されてNiOとなって活性を失い、He中500℃で処理することにより、NiOが炭素で還元されてNiとなるために活性を取り戻すと判断できた。
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