研究概要 |
我々は500℃前後で堆積させた炭素質薄膜とn・型シリコン(n-Si)との積層体(C/n-Si)が整流作用を有し、さらに光起電力を示す太陽電池としての特性を発現することを見い出した。 昨年度は種々の含酸素化合物を原料とした炭素質薄膜の調製を試み、調製条件と電気的性質との関係、さらには太陽電池特性に与える調製条件の影響とその最適化を検討した。その結果、p-キシロキノン(2,5-ジメチル-p-ペンゾキノン)、およびピロメリット酸二無水物を原料としたとき太陽電池特性が出現し、最適化により最高変換効率7.0%、平均5%以上の調製条件を確立した。 本年度は1)太陽電池特性のさらなる向上と2)炭素質薄膜の堆積機構、3)電子物性の把握とその制御について検討を行った。 1) 太陽電池特性の向上については、新たにセル構成の改良を行った。これは表面電極に透明電極を使用する試みであり、金とのハイブリッド化が可能であることと、変換効率の向上を示唆する結果が得られた。また、薄膜自身の物性制御についても引き続き検討を行い、再現性の高い薄膜調製条件を確認した。 2) 次いで炭素質薄膜の堆積機構についてAFMを用いて検討した。その結果、薄膜生成反応は700℃前後で大きくことなり、700℃以下では基板上での反応が主に進行し、それ以上では気相中での反応が主になることがわかった。この反応機構の変化は3)電子物性とも大きく関係し、薄膜の電子物性(ホール係数、温度依存性、エネルギーバンドギャップ等)は700℃を境に著しく変化した。 また、炭素質薄膜は間接遷移型および直接遷移型の両者の光学バンドギャップを有する可能性を見い出し、デバイスとしての応用とともに、今後注目される。
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