炭素材料は、高温域において優れた比強度、高い熱的安定性及び熱伝導を示すことから、ガスタービンや核融合炉の外壁ならびに超耐環境性材料としての使用が検討されているが、核融合炉への応用を考えた場合、軽量かつ加工性が良く、さらに中性子照射による材料の耐劣化が求められる。そこで本研究では、スパッタリング特性の優れているケイ化タングステンを炭素材料を固相反応し、その複合基材の作製過程における反応様式及び熱伝導率を検討した。 ケイ化タングステンと高密度黒鉛基材とを固相反応した結果、基材界面では炭化ケイ素及び炭化タングステンが検出され、基材内部においては炭化ケイ素の濃度傾斜層が形成した。基材内部における炭化ケイ素の濃度傾斜層を形成機構を調べるために、基材表面に模擬ノッチを導入し、シリコンとの固相反応を行ったところ、濃度傾斜層の形成は基材表面上に点在している細気孔が関与しており、細気孔に閉じこめられた微量の酸素がシリコンと反応して一酸化ケイ素ガスとなり、この生成ガスが気孔を介して基材内部に拡散することによると考えられた。また、ケイ化タングステン層被覆基材の熱伝導率は、未処理基材とほぼ同一であり、核融合炉への応用に可能性があることが明らかとなった。
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