Cd_<1-x>Fe_xS、Cd_<1-x>Mn_xTe、Ga_<1-x>Mn_xAsなどの希薄磁性半導体について遠赤外-可視光領域での磁気光吸収スペクトルを最高150-500Tまでの超強磁場下で観測した。遠赤外-赤外領域では自由電子(正孔)のサイクロトロン共鳴を観測し、サイクロトロン質量がそれぞれの母体結晶における値とは異なることを見出した。 Cd_<1-x>Fe_xSでは、母体結晶のCdSに見られるサイクロトロン質量の特異な温度依存性がさらに顕著になり、結晶のc-軸に対する磁場の印加方向にその効果が大きく依存するという興味深い現象を明らかにした。Cd_<1-x>Mn_xTeについては電子のサイクロトロン質量がCdTeと同様に温度の上昇とともに単調に増加し、その温度係数がCdTeでは光子エネルギーにあまり依存しないのに対しCd_<1-x>Mn_xTeでは光子エネルギーに大きく依存することがわかった。その結果Cd_<1-x>Mn_xTeのCdTeに対するサイクロトロン質量の増大率は室温から50K程度の低温にかけて約12%から6%ほどに小さくなる。今後、縦型光学フォノンや磁性イオンのスピンの偏極度などが、これらの現象にどのように関係しているのかさらに詳しく調べる必要がある。Ga_<1-x>Mn_xAsではMn濃度が0.003%程度の低濃度の試料について正孔のサイクロトロン共鳴を観測し、正孔のサイクロトロン質量はGaAsに比べて18%程度も軽いことがわかった。その原因については今のところ不明であるが、格子歪の影響が強い可能性がある。Mnがそれ以上に高濃度になると100T程度の超強磁場領域においても共鳴が観測できないぐらいに易動度が低下してしまうことも明らかになった。 また、可視領域ではストリークカメラを用いた分光装置を用いることにより、約450Tまでの超強磁場領域でCd_<1-x>Mn_xTeの磁気光吸収測定をはじめて行い、希薄磁性半導体特有の励起子の大きなゼーマンシフトに加え、超強磁場下ではランダウ準位に付随した吸収線を明瞭に観測する事ができた。
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