最小標準理論に1つ余計にヒッグス2重項を加えると小林・益川行列以外にヒッグス系だけでCPが破れ得る。このCPの破れはクォーク・レプトンの湯川結合を通して、また、超対称模型の超対称粒子の質量行列を通してバリオン数生成に関与することが知られている。このヒッグス系のCPの破れは2つのヒッグス場の相対位相で表されるが、これは有効ポテンシャルによって力学的に決定されるべき量である。本年度の研究では、有効ポテンシャルを摂動論的に計算し、その最小値を数値的に探すアルゴリズムを開発して、それを超対称標準模型に適用してCPを破る位相を様々なパラメータについて計算した。また最小値に於ける有効ポテンシャルの2次微係数から3つの中性ヒッグス粒子の質量も求めた。この方法は有限温度の場合にそのまま適用可能で、有限温度の相転移を調べ、電弱バリオン数の生成で重要な相転移温度やその温度におけるヒッグス場の期待値の大きさ、2つのヒッグス場の期待値の比(tanβ)を得た。 この相転移温度での有効ポテンシャルを用いることにより、相転移が一次の場合にはヒッグス系の古典的運動方程式から2相の境界付近でのヒッグス場の振る舞いを決定し、それを用いて生成されるバリオン数の評価を行った。特に、tanβ>5でCP evenな軽い方のスカラー場の質量が95GeV以下で、CP oddスカラー場の質量とある関係を満たす場合には、2相の境界付近でのみ大きくCPを破り、十分なバリオン数が生成されることを示した。
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