バイオマス廃棄物であるエビや蟹等の甲殻類の殻から得られるキトサン、柑橘類中に含まれるペクチン酸、ならびに昆布などの褐藻類中に含まれるアルギン酸を原料とした吸着剤や溶離剤を合成し、陶磁器産業や金属産業を始めとする様々な産業から発生する廃水中の重金属や有用金属の回収・除去するための研究を行い、以下のような成果を得た。 (1) 架橋ペクチン酸およびアルギン酸、ならびにアミド化ペクチン酸およびアルギン酸の調整を行い、鉛、亜鉛、鉄に対しての吸着挙動を調べた。その結果、鉛と鉄に対しての高い選択性が見られた。この結果よりこれらの吸着剤を充填したカラムに大量の亜鉛と微量の鉛を含む液を通液したところ微量な鉛が高選択的に分離・除去された。 (2) 水溶性のアルギン酸ナトリウムを用いたアフィニテイー限外濾過による亜鉛と鉛の分離を行ったところ鉛だけがアルギン酸に保持されて亜鉛から効率的に分離することができた。同様に水溶性の4級化キトサンを用いて6価のクロムのアフィニテイー限外濾過を行ったところ、低いpHにおいて効率的に分離できた。 (3) キトサンの水酸基をアシル化することによりクロロホルム等の有機溶媒に可溶な油溶化キトサンを合成し、銅や鉄を始めとする様々な金属の抽出挙動を調べた。原料のキトサンによる吸着においては銅よりも鉄に対しての高い選択性が見られた、油溶化キトサンでは銅は低いpHからでも良く抽出されるのに対して、鉄は全く抽出されないという興味深い選択性の逆転という現象を見出した。 以上のようにバイオマス廃棄物から得られる天然物の多糖類は合成の分離材料には見られない、興味ある優れた分離機能を有することを見出した。
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