わが国では食生活の急速な西欧化により食肉の需要が年々著しく増え、畜産振興策と相まって巨大化した畜産業あるいは畜産団地から膨大な家畜糞尿が集中的に排出し、その処理に困窮している。その典型的な地域は、わが国の畜産生産の2割を占める南九州で、その中心が鹿児島県である。 そこで、鹿児島県における家畜糞尿の資源化および緑農地還元システムを構築し、本地域の家畜生産のゼロエミッション・システムの創出を試みた。得られた成果は次の如くである。 1) 家畜別の糞尿量およびその資源化: 平成10年度における鹿児島県の飼育頭数は、牛が34.19万頭、豚が134万頭、鶏が3025万羽であった。いずれの家畜数も北の畜産王国北海道を抜いて日本一である。これらの家畜糞尿量は、677万トンであった。この量は、全国の家畜糞尿発生量の約8%に当たる膨大な量であった。県内143箇所のコンポストの製造能力は24.7万トンで、家畜糞尿の資源化率は約7%であった。 2) コンポストの腐熟の簡便・迅速な判定法の開発: 新しいコンポストの簡便・迅速腐熟判定法として、発芽インデックス法を開発した。本法の概要は、蒸留水を対照にコンポストの水抽出液でコマツナを栽培して、その発芽数と根量を1、2、7日毎に調べ、Gl=G/Gc×L/Lc×100(Gl:発芽インデックス、G:コンポストの抽出液の発芽数、Gc:蒸留水の発芽数、L:コンポスト抽出液の発芽数、Lc:蒸留水の根量)の式で求める。発芽インデックス(Gl)が70%以上あれば有機物の腐熟が十分なコンポストである。 3) 理想的クリーンな家畜コンポストの製造の試み: 理想的クリーンな家畜糞尿コンポストの製造は、超高温・好気発酵法こそ望ましい。現在、鹿児島市で発生する下水汚泥は、超高温・好気発酵法で全量コンポストにされている。製造期間中85℃以上の超高温を維持するため、45〜50日の極めて短期間で完熟コンポストにしている。そこで、本技術を家畜糞尿のコンポスト化に導入するために、本製造法について詳細に調べることを試みた。 4) 緑農地還元システムの構築: 家畜糞尿の緑農地還元システムを構築するために、鹿児島県の各試験機関(農業、家畜、果樹及び茶業試験場)、大学及び民間企業、いわゆる“官・学・民"からなる有機物資源化リサイクル研究会を平成9年に組織した。今年度は、講演会の実施(平成10年8月)および機関誌(有機物資源化とリサイクル)の発行を行い、農地還元システムの構築を推進中である。
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