高温超伝導SQUID磁束計の性能向上には目覚しいものがあり、磁場分解能は数10fT/Hz^<1/2>のものが作られるようになってきた。しかしながら、高温超伝導SQUIDにダンピング抵抗を付与することでさらなる性能の向上が期待できる。そのためには抵抗となる金属薄膜と超伝導薄膜との界面の解析が必要となるので、今回、それらの解析を目標として高温超伝導SQUIDを用いたSQUID顕微鏡を設計作製した。 これまでにいくつかのタイプの高温超伝導SQUID顕微鏡が考案されており、それらは被測定物の温度によって分類される。一つは室温サンプル用でもう一つは液体窒素温度サンプル用である。共にSQUID素子自身は液体窒素温度に維持されるが、前者の方式では真空窓によってサンプルとSQUIDが分離断熱されており、後者の方式では一般にサンプルとSQUIDが液体窒素に浸漬される。それぞれに利点があり、前者ではサンプルの温度に自由度があるが、サンプルを真空窓の厚さよりも接近させることができない。一方、後者の液体窒素温度タイプではサンプルとSQUIDの距離を接触するぎりぎりまで近づけることができるが、サンプル温度に自由度がない。我々の目的のためにはサンプルをぎりぎりまで接近させることができ、かつ、サンプル温度が可変である構造が必要となる。そこで、SQUIDを格納したクライオスタットとは別にサンプル室を設け、ゲートを閉めることによってそれぞれを独立して排気できるシステムを設計した。この設計によると、ゲートを開けることによってサンプルとSQUIDの距離を原理的には数ミクロンメートルにすることができる。 これを用いて穴をあけた超伝導薄膜に約14φ_0の量子化磁束をトラップさせたイメージを観察することができた。
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