酸化物超伝導体の電子デバイス応用において、高品質で再現性の良好な特性を有するジョセフソン接合作製が望まれている。本研究では、このような接合作製技術の実現を目指して、とくに酸化物超伝導体に適合した絶縁体トンネルバリア材料を探索する観点から検討を進める。 ここでは超伝導体電極材料としてはBi_2Sr_2CaCu_2O_8(Bi2212)を用いるが、この薄膜では極めて(001)配向(c軸配向)成長しやすく、かつc軸方向ではコヒーレンス長が極端に小さいという特性を示すため、積層型の超伝導接合製作は著しく困難である。 このため、上記絶縁体バリア材料の研究とともに、膜面に垂直方向のコヒーレンス長増大を図るため、PbドープBi2212の非c軸配向薄膜形成の検討を行っている。 本研究では、極薄のバリア層絶縁体材料として、新規に希土類金属酸弗化物(REOF)を選びまずその成膜検討を開始した(ここで、希土類金属REとしては、電極薄膜とのエピタキシャル整合性からSmを用いる)。 REOFの特徴は、(1)高温相では立方晶の螢石型構造をとり、その格子定数よりPbドープBi2212とのエピタキシャル整合性が良好である。(2)融点が高く、耐熱性に優れている。かつ、構成元素として金属イオンとの結合性が強い弗素が入っており、電極層/バリア層界面の急峻性に優れていることが期待できる(このことはジョセフソン接合形成において本質的に重要である)。 SmOF薄膜の形成は、基板としてSrTiO_3を用い、以下の方法で試みた。 電子ビーム蒸着法により、蒸発源としては弗化サマリウムSmF_3粉末を用いて、オゾン化酸素雰囲気中で反応性蒸着により成膜する。 成長面温度を、Bi2212薄膜作製と同じ700℃とすることにより、弗素が有効に除去されて、SmOFが成長することを見いだした。成長薄膜の詳細なキャラクタリゼーション、接合形態での検討が今後の課題である。
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