研究課題/領域番号 |
10145106
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今中 忠行 京都大学, 工学研究科, 教授 (30029219)
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研究分担者 |
高木 昌宏 大阪大学, 工学研究科, 助教授 (00183434)
早出 広司 東京農工大学, 工学部, 助教授 (10187883)
大竹 久夫 広島大学, 工学部, 教授 (10127483)
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キーワード | バイオターゲティング / 分子認識 / 環境応答分子 / 抗体工学 / 重金属捕捉ペプチド / phytochelatin |
研究概要 |
カドミウムや水銀などの重金属は、その有用さから工業的に多く利用されており、厳しい環境基準下で処理されているが、これらの猛毒な重金属が漏出した場合に生態系に与える影響は計り知れない。そこで本研究では、phytochelatin(PC,(γGlu-Cys)n-Gly)と呼ばれる重金属捕捉ポリペプチドおよびPCや重金属複/PCコンプレックスに対する特異的抗体に着目し、環境中に存在する重金属の迅速検出法や無毒化・回収プロセスへの応用を試みる。さらに本研究では重金属とペプチド間の、あるいは重金属/ペプチドコンプレックスとモノクローナル抗体との相互作用を分子レベルで解析する。 平成10年度は、重金属を含む溶液にpcを添加し、捕捉にかかわっていない遊離のチオール基をチオール基測定試薬DTNB(5,5'-dithiobis-2-nitrobenzoic acid)で発色(黄色)゚測定することにより、微量な重金属濃度(μM)を約10分間で測定できる方法を構築した。さらに化学合成した均一なPC7が、天然型PCn(n=2.3.4)よりも定量に優れていることを明らかにした。また、in vitroにおいて、カドミウムによるサルモネラ菌の生育阻害が、PCの添加により減少することを明らかにし、PCの直接散布が重金属汚染の無毒化に利用できることを明らかにした。 次に、これまでに報告のないPCに対する抗体の取得を試みた。抗PC抗体はイムノセンサー技術を用いた重金属のオンラインセンシングなどの環境浄化技術への応用が期待できる。これまでに、PCの化学合成法を基にMAP(multiple antigen peptide)-PCを合成し、Balb/cマウスを免疫することで抗pc抗体の誘導を確認した。牌臓細胞よりハイブリドーマ細胞を調製後、抗PCモノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングした結果、PCよりもCd-PC複合体を強く認識するモノクローナル抗体産生株(4-9C株)を取得した。PCはCu2^+、Hg2^+、Cd2^+、Ni2^+、Zn2^+、Ag^+などの重金属イオンを捕捉するが、本抗体はCu-およびCd-PCコンプレックスを特異的に認識することが示された。今後、さらなる抗体の取得を試みるとともに、重金属-PC複合体に対する結合特異性の上昇を期待したscFv(single chain Fv)の構築を試みる。
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