研究課題/領域番号 |
10145106
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今中 忠行 京都大学, 工学研究科, 教授 (30029219)
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研究分担者 |
高木 昌宏 大阪大学, 工学研究科, 助教授 (00183434)
早出 広司 東京農工大学, 工学部, 助教授 (10187883)
大竹 久夫 広島大学, 工学部, 教授 (10127483)
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キーワード | バイオターゲティング / 分子認識 / 環境応答分子 / 重金属捕捉ペプチド / phytochelatin |
研究概要 |
本研究では、植物や藻類などが合成する重金属捕捉ペプチドphytochelatinを対象として、ペプチド-金属イオン間の分子認識メカニズムの解明を目的とした。phytochelatinはγ-Glu-Cys結合を基本とする主鎖を有し、システインのチオール基を介して重金属と結合すると考えられているが、重金属結合能に必要な構造については明らかにされていない。平成11年度では、Glu-Cys結合、β-Asp-Cys結合の主鎖からなるphytochelatin誘導体、(Glu-Cys)_7Gly[(EC)_7G]、(β-Asp-Cys)_7Gly[(βDC)_7G]を合成し、その重金属捕捉能や重金属無毒化能について検討した。 化学的に合成した(γEC)_7G、(EC)_7G、(βDC)_7G、およびシステイン、グルタチオンと各種重金属イオンとを混合し、結合に関与していない遊離チオール基をDTNBで定量したところ、システインやグルタチオンがほとんど結合しないNi^<2+>、Cd^<2+>、Zn^<2+>に対して、(γEC)_7G、(EC)_7G、(βDC)_7Gが結合能を有することが示された。この3種のペプチド間では重金属特異性はほとんど差がなかったが、重金属捕捉能は(γEC)_7Gと(EC)_7Gがほぼ同等であり、(βDC)_7Gがやや低いことが示唆された。より直接的に重金属との結合を評価するため、S-Cd結合が250nmに吸収を示すことを利用した結合解析を行った。この場合においても(EC)_7Gは(γEC)_7Gと同程度のCd^<2+>結合能を、(βDC)_7Gはやや低い結合能を有することが示され、phytochelatinのγ-Glu-Cys結合による主鎖構造が重金属捕捉能発現に必須ではないことが明らかとなった。Phytochelatinは植物細胞内においてCd^<2+>の毒性を無毒化するために生合成されると考えられていることから、(γEC)_7Gと同程度の重金属捕捉能を有する(EC)_7Gの無毒化能について検討した。200mMCd^<2+>(MIC)を添加した液体培養では、S.typhimuriumの生育は完全に抑制されたが、2.0mM SH基に相当する量の(EC)_7Gを添加した場合には生育は完全に回復したことから、(EC)_7Gはphytochelatinと同程度の重金属無毒化能を示すことを明らかにした。
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