研究概要 |
分子細胞生物学の進展に伴い、分子レベルで多くの細胞内小器官や細胞表層に輸送局在化するタンパクの分子内シグナルやレセプターの解析が進んできた。こういった中で、真核細胞において膜貫通タンパクや細胞壁に留まるタンパクや細胞膜にリン脂質を介して留まるGPI-アンカーを持つタンパクなどの分子構造が明らかになり、魅力的な基礎研究の対象となってきている。田中は、GPI-アンカーを持つタンパクの分子情報とそのメカニズムを利用して、酵母の細胞表層へ遺伝子工学のアイデアを用いて酵素を活性を有したまま導き出すモデル系の構築に成功したので、このシステムの広範な活用に取り組むため、今年度は、発光タンパク質や機能性タンパク質やウイルス被覆タンパク質の抗原となるエピトープ部分の遺伝子を導入して細胞表層発現させ、細胞内外の生命情報を非破壊的に計測したり、生細胞ワクチンとして利用できるアーミング酵母の創製に研究を展開し成功した。長棟は、抗体の抗原認識部位である抗体可変領域VH,VLと種々の受容体とのキメラ受容体を介した情報伝達シグナルを細胞内に伝達し、増殖や分化やアポトーシス死などを自由に制御できる系の構築を試みてきたが、今年度は、抗体可変領域VH,VLとIL-6受容体βのキメラ受容体を発現するハイブリドーマ細胞を無血清培地で抗原濃度依存的に増殖させ、抗体生産能を向上させることが可能であることを実証した。さらに、秋吉は、細胞表層の糖鎖の存在状態をリポソームを用いて人工的に再構築し、糖鎖の集合制御による機能発現とその利用について検討してきたが、今年度は、細胞サイズの巨大なリポソームへのガングリオシドの組み込みとその組み込んだリポソームの疑似神経細胞形成を視覚的にとらえた。
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