近年DNA、RNA等の核酸分子の分子認識能が注目されている。これはループ状にした核酸分子が認識しようとするタンパク質のクレバス状の穴にカギの様にはまるような認識機構を持っていると考えられる。本研究では分子認識素子としての核酸分子の設計を行い、その安定性と実用性を実証し、申請者らが着目している動物細胞の液-液界面培養法(フルオロカーボンなどの疎水性液体と培養液の界面で動物細胞を培養する方法)で、細胞がスフェロイド状の細胞塊を形成しやすいのに着目し、細胞塊形成因子の探索を含めたメカニズムの解明を行うことを目的としている。 分子認識性を持つオリゴヌクレオチド分子として一本鎖の状態ではヘアピン状(ループ状)の構造をとり、報告にあるような分子認識能を持つと考えられるoligo 1を合成した。また他のオリゴヌクレオチドを組み合わせて、両サイドにHindIII切断サイトを付加した。またoligo 1の3'末端にterminal transferaseを用いてDIG-11-ddUTP(べーリンガー・マンハイムリンガー・マンハイム社製)を修飾し、in situハイブリダイゼーションが可能な分子認識性オリゴヌクレオチドライブラリーを作製し、10pmol以上で検出可能であることを確認した。また、本研究のターゲットとしている初代肝細胞に関しては以下の知見が得られた。初代肝細胞の場合には界面活性剤(ぺンタフルオロベンゾイルクロリド;F_5BzCl)の濃度により細胞の形態が変化し、2μg/ml以下の濃度では明らかに細胞塊の形成が認められた。次にこの細胞塊の形成が液-液界面上でどのように形成されていくのか、またどのような細胞塊の時に肝特異機能が発現されるのかを詳細に検討するため、培養経過の定点連続観察装置を作製し、画像をビデオレコーダーで連続的に記録した。この時のアルブミン分泌活性及び胆汁酸分泌活性はF_5BzClの濃度が低いほど活性が高いことが観察され、細胞塊の形成との相関が示唆された。しかし、定点連続観察装置の結果より従来のスフェロイド化は必ずしも必要ではなく、細胞同士が二次元的に接着しあい、ある程度の大きさの集合体(直径150μm程度)を形成している状態が最も良いことが推定された。
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