近年、生物機能の解析において、個々の細胞単位での計測・制御が重要になっている。このような解析は、細胞単位でシグナルを与えたり、また同時に個々の細胞からシグナルを得る技術が不可欠である。本研究は、具体的にストレス応答遺伝子であるイネキチナーゼ遺伝子を選び、イネ培養細胞の中の単一の細胞をターゲットし、このターゲット細胞におけるキチナーゼ遺伝子の発現制御を行うことを目的とした。本年度は、次の項目を実施した。 1. イネ培養細胞への遺伝子導入と発現効率の解析:導入する遺伝子として、イネキチナーゼのプロモーターにグリーン蛍光タンパク(GFP)のcDNAを挿入したプラスミド(pCHI-GFP)を用いた。pCHI-GFPをターゲット細胞に導入した12時間後にエリシターを作用させ、更に1日後にGFPの蛍光を観察したところ、約22%の細胞からGFPの蛍光が観察された。 2. ターゲット細胞のにおけるエリシターによるイネキチナーゼ遺伝子の発現解析:エリシターの作用する第一段階について解析を行った。pCHI-GFPを導入した細胞に、エリシターを細胞内部に直接導入したところ、全ての細胞においてGFPの蛍光は見られなかった。そこで、これらの細胞に対して、細胞外部からエリシターを作用させたところ、約7.6%の細胞からGFPの蛍光が見られた。これらのことから、エリシターの作用する第一段階は、直接細胞内に入って作用するわけではなく、原形質膜を介してシグナルが伝わると考えられた。
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