マウス腹腔内に抗原を投与し生体内免疫を行った後、抗原によるB細胞認識機構に基づく抗原-ビオチンを用いた目的の抗原特異的抗体産生B細胞の選択を行った。次に、抗原選択されたB細胞をストレプトアビジン-ローダミンで蛍光標識し、共焦点レーザー顕微鏡にて解析した。その結果、予測通り抗原特異的に蛍光ラベルされるB細胞を認めることができた。この結果は、抗原によるB細胞認識機構を直接証明するものであり、本研究の進展において大きなステップとなった。しかし、抗原-ビオチンを作製する際、抗原のリジン残基を直接ビオチン化するため、B細胞選択時に抗原性の低下が懸念された。そこで、その欠点を是正するため抗原のシステイン残基を修飾する新たな抗原-アビジンの開発を行った。その目的のために、アミノ酸のリジン残基およびシステイン残基と特異的に共有結合を形成できる化学修飾剤を利用した。この利点は、アビジンのリジン残基と抗原のシステイン残基を修飾するため、抗原のリジン残基を直接修飾することなくB細胞選択のための抗原-アビジンを作製できる点にある。そこで、抗原-アビジンを用い抗原感作されたB細胞の選択を行い、共焦点レーザー顕微鏡にて解析を行ったところ、抗原-ビオチンを用いた場合とほぼ同程度の割合で抗原特異的に蛍光ラベルされるB細胞を確認することができた。この結果は、予測とは反し、抗原-ビオチンも抗原-アビジンと同様にB細胞選択に利用できることを強く示唆するものであった。次に、生体外免疫法を用い、上述と同様の方法で抗原によって感作されたB細胞の検索を抗原-ビオチンおよび抗原-アビジンを用い解析した。その結果、生体外免疫法においても抗原特異的に認識されるB細胞の存在を明かにすることができた。この成果は、将来、生体外免疫法を利用した新たなる効率的モノクローナル抗体作製法の開発に大きく寄与するものと考えられる。尚、コントロール実験において抗原特異的に蛍光ラベルされるB細胞は、確認することはできなかった。
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