本研究は、このような見られるタンパク質の可撓性あるいはフレキシビリティーと特異的分子認識能との関係を、主に圧力揺動を中心として解析し、その結果を持って新たなる分子認識能を有するタンパク質の創出に展開することを目的とする。 高圧力としては50MPa〜300MPaの可逆的変化領域と350MPa以上(<700MPa)の不可逆的領域とに区分して検討し、これらの領域での通常条件下とは異なる触媒機能の発揮の根源となる構造上の変化をとらえ、触媒・分子認識能の詳細な変化を探求した。 (1) タンパク質・酵素系におけるフレキシビリティーの解析と分子認識機能の制御では、プロテアーゼを中心にとりあげ、酵素反応速度論的解析とタンパク質-標的分子間相互作用解析を常圧・高圧で行う一方、構造的解析には高圧下・復圧下での蛍光測定、IR測定を行う。あわせて、化学的メモリー法(高圧下でのレポーター分子による修飾・高圧下でのタンパク質分解・フレキシビリティー制限下でのアフィニティーラベル)などex situなものを重要な方法論としin situ分光法を補足したが、今年度は、サーモライシン・ヴィメライシンなどの金属プロテアーゼについて、温度・圧力の広い範囲における活性・構造相関図を得ることに成功し、特に高圧力下条件で特異な活性や、温度・圧力間antagnismを観測することができた。 (2) タンパク質モデルの標的分子認識機能の解析では、エラスチン様人工配列ペプチドの開発・調製に成功するとともに、イオン性基と水素結合性基および疎水基を持ったビニルコポリマーについて、その高次(集合)構造と低分子補足(認識)能の解析を行うことができた。
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