ランダムなアミノ酸配列をもつ人工タンパク質(約140アミノ酸残基)を大腸菌中で発現させたところ、得られた形質転換株の約50%がランダムタンパク質を発現しており、その約25%は水に可溶性であった。2種類の可溶性の人工タンパク質を精製してその性質を調べたところ、2次構造はもっていないものの、モルテングロビュール程度のコンパクトさをもった形をしており、千量体を形成し、弱いながらもエステラーゼ活性を示すことがわかった。以上の結果は、天然のタンパク質がきちんとした立体構造をとることと、高い触媒活性を示すことは、進化の過程で獲得された性質と考えられる。そして、ランダムタンパク質が進化の出発点としてふさわしい性質を有していることが明らかとなった。そこで、25個のランダムタンパク質をコードしている遺伝子にランダム変異を導入して得られた遺伝子ライブラリーをファージミドに挿入し、人工タンパク質をfdファージのgeneIIIタンパク質と融合した形で発現させ、2.1×10^6のライブラリーを得た。その際に導入した変異の率は全長13.0アミノ酸の中で平均3.45であり、ランダムタンパク質の発現効率は21.7%であった。得られたファージライブラリーのバラエティーは、10^6〜10^8程度であった。
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