研究概要 |
1) ブロック共重合体の合成については、(1)DNA担持ミセルの特性解析用に、これまで本研究グループで合成法を確立し、様々な組成で構造制御が可能なポリエチレングリコール(PEG)-ポリリシンブロック共重合体(PEG-PLys)の調製、(2)パイロット素子をミセル表層に連結するために、PEG末端に定量的にアルデヒド基を有する末端反応性PEG-ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)ブロック共重合体(PEG-PDMAEMA)の新規合成、という二つのテーマを推進した。(1)については順調に合成が進捗し、様々なポリリシン鎖長を有し、かつ分子量分布の狭いブロック共重合体を得た。(2)については新たな合成法の確立が必要であった。そこで、酸処理によって容易にアルデヒド基に変換が可能なアセタール(3,3-diethoxy-1-propanol)の金属アルコキシドを用いて、逐次的にエチレンオキシドとDMAEMAの重合を行い、首尾良く目的のブロック共重合体を得ることに成功した。このブロック共重合体の末端アセタール基は弱酸処理によって定量的にアルデヒド基に変換されることも確認した。 2) PEG-PLys,PEG-PDMAEMAのいづれの系においても、DNAとの会合によってミセル形成が確認された。特に、合成が先行したPEG-PLys系については、詳細な解析を行い、(1)粒径80nm程度、(2)ミセル化によって核酸分解酵素に対する耐性が飛躍的に向上、(3)PEGが外殻となり、荷電を有する内核を遮蔽するcore-shell構造を形成、といった物理化学的特徴が明らかとなった。さらに、この系について、ルシフェラーゼ活性より遺伝子発現効率を評価した。その結果、PLys鎖が長くなり、安定性が増すに徒って高い遺伝子発現効率が得られ、かつ、その効率は、現在広く用いられている遺伝子導入用カチオン性脂質集合体であるリポフェクチンを凌駕することも明らかとなった。
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