研究概要 |
化学の重要な役割は,新しい有用な物質を合成して世に送り出すことにある.これを一層推進するためには,これまで確立してきた分子レベルにおける電子の非局在様式の概念を活用しつつ,これを分子間へと展開し,有機分子および分子システムにおける「特異な非局在電子系」を創出することが重要な基盤となる.本特定領域"非局在電子系"ではこのような観点から,共役電子系有機物質に関する分子レベルにおける電子の非局在様式の概念を活用しつつ,これを分子間へと展開し分子および分子システムによる「特異な非局在電子系」を創出することを目的とした.本領域ではこのような観点から三つの研究項目(A01:拡張共役電子系,A02:スピン共役電子系,A03:水素-電子相互作用系)を組織し,特異な機能・物性を発現する非局在電子系を探索するとともに,熱,光,磁場,電場などの外場によって性質が相互変換する動的非局在電子系を構築し,従来にはない複合的な機能・物性を備えた物質を開発した.A01班では新しい共役電子系のプロトタイプの合成法の確立,および発展性のある多彩な構造を持つ拡張共役電子系の開発,A02班では,安定な開殻有機分子を開発する基礎研究に加え,新しい手法を用いてスピンの整列様式を制御しうる特異なスピン共役電子系の開発,A03班では,特異な水素結合組織体をプロトンと電子それぞれの動的側面から解明するとともに、電子の非局在性とプロトンの局在性の特徴を生かした新しいプロトン-電子相互作用系の開発を行った.
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