研究概要 |
本研究では、生物の根元的エネルギー固定法の理解とその人工機能体の構築を目指して、配位結合や水素結合を組み合わせ、ポルフィリン超分子組織体を構築する。このためイミダゾールや金属配位子などで置換したポルフィリンを合成し、金属配位と水素結合を組み合わせた非局在電子系を構築することを目指した。まず対面するメソ位にイミダゾール、これに直交するメソ位に長鎖アルコキシフェニル基を置換したポルフィリン1を合成した。ク口ロホルム中のXMRスペクトルの解析により、クロロホルム中で、イミダゾールの水素結合によりポルフィリン組織体を形成する平衡が存在し、メタノールを添加すると水素結合が切れることを見出した。またこの化合物のUVスペクトルは、非極性溶媒中では非常にプロードな吸収を与えた。従って非極性溶媒中でより水素結合を形成し易くなり、ポルフィリン環の積層構造体形成が進行し、中心をややずらせて平行に対面するポルフィリン間の励起子相互作用による長波長ー短波長シフトが起こっていることが示された。更に5,15-ビス(N-メチルイミダゾリル)-10,20-ビス(アルコキシフェニル)置換ポルフィリンを合成し、これにZnを導入すると、ポルフィリシ2量体形成に特徴的な、NMRスペクトルにおけるポルフィリン環上に位置するプロトンの高磁場シフト及びUVスペクトルでのSoret帯の分裂が観測され、2つのポルフィリン環に属するイミダゾールの相補的配位とポルフィリン環同士のスタッキング相互作用により、中心をずらせて平行に配向したポルフィリン2量体を生成した。そこで上記のビスイミダゾール置換ポルフィリン1にZnを導入すると、配位結合と水素結合を組み合わせることにより、巨大な超分子組織体構造の構築に成功した。
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