研究概要 |
1. マゼラン雲の本格観測を可能にする高感度受信機の製作・整備 これまで観測してきたCOJ=2-1輝線のほかに、COJ=3-2,CSJ=5-4,HCNJ=3-2,同J=4-3,HCO+J=3-2,同J=4-3の輝線を観測できるように、入力光学系の広帯域設計を行った。ミクサーはマウントの最適化を進めた。特に230GHz帯は、SIS素子が最適バイアス付近で負性抵抗を持つ問題がわかり、素子のマウント位置の精度向上、バイアス回路の改良、印可磁場強度の最適化により対処した。 2. 観測の自動化、リモート化 望遠鏡システムをインターネット経由で監視・制御するシステムを開発し、野辺山の60cm望遠鏡1号機を実際に東京から運用してその安定性を確認した。システム改良の結果、最長2ヶ月間の無人リモート観測ができた。しかし、日本-チリ間のインターネットは接続が不安定で、現在のシステムではまだ長期リモート運転は難しい。この点については平成11年度の研究項目である。 3. これまでに取得した予備的なデータの解析と出版 大マゼラン雲についての予備的な観測データを詳細に解析し、論文としてまとめた(投稿中)。その内容を、国際天文学連合シンポジウムにて発表して国外の研究者の関心を集めた。銀河系の観測データを整理し、大マゼラン雲との類似点・相違点をまとめた。大マゼラン雲は、銀河系円盤部と同様、CO2-1/1-0輝線強度比の動径方向の勾配があるようであるが、銀河系の中心部に見られる分子ガスの集中は大マゼラン雲には見られない。
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