研究概要 |
生まれたばかりの星の集団は、星形成の根源的な問題-どのような質量の星がどれだけの割合で誕生するか(初期質量関数-IMF)-を研究するには絶好の対象である。本研究においては、高感度・高解像度を持ち、かつ、ある程度の広視野をカバーする多色同時赤外線観測装置を用意し、マゼラン星雲で生まれつつある若い星ぼしの集団的星形成領域を隈無く探査する。さらに、我々の銀河系における多様な集団的或いは単独的星形成と比較し、初期質量関数の普遍性を調べることを目的とする。 今年度は、高性能赤外線カメラの設計・製作を進めた。カメラは、1024xl024 HgCdTe検出器を3個実装し、近赤外波長域の3波長(1.25,1.65,2.2μm)同時観測が可能である。光学系は、F変換レンズ系、オフナーシステムと呼ばれる反射系およびビームスプリッターで構成され、装置内での光のロスの少ないものである。F変換光学系の採用により、様々な望遠鏡での観測が可能になった。真空冷却系は、小型・軽量(約100kg)のもので、かつ、フィルターの交換などの駆動部分を持たない設計とし、装置のポータビリティーを高めた。また、冷却には冷媒を必要としないように冷凍機を採用した。赤外アレイ3個を同時駆動するためのエレクトロニクス系の製作も行い、試験用の検出器でその動作を確認した。ソフトウエアに関しては、既存のデータを用いて、サーベイデータをパイプライン的に一挙に解析するためのツールを開発した。これにより、観測後すぐに興味ある天体を選び出すことができるようになった。
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