赤外線カメラによる星・惑星系形成領域の研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10147214
• 研究機関: 国立天文台
• 研究代表者: 林 正彦 国立天文台, ハワイ観測所, 教授 (10183914)
• 研究分担者: 柳澤 顕史 岡山天体物理観測所, 助手 (90311183) ; 上野 宗孝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (30242019) ; 田村 元秀 国立天文台, 光学赤外線天文学・観測システム研究系, 助教授 (00260018) ; 平尾 孝憲 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00293689)
• キーワード: 赤外線 / 星・惑星形成 / 初期質量関数 / マゼラン星雲

研究概要

生まれたばかりの星の集団は、星形成の根源的な問題-どのような質量の星がどれだけの割合で誕生するか(初期質量関数:IMF)-を研究するには絶好の対象である。本研究においては、高感度・高解像度を持ち、かつ、ある程度の広視野をカバーする多色同時赤外線観測装置を用意し、マゼラン星雲で生まれつつある若い星ぼしの集団的星形成領域を隈無く探査する。さらに、我々の銀河系における多様な集団的星形成、あるいは、単独的星形成と比較し、初期質量関数の普遍性を調べることを目的とする。
平成12年度は、上記の多色同時赤外線観測装置(SIRIUS:シリウスと名付けた)を完成させた。これは、l024x1024の世界最高水準の赤外線検出器を3基搭載し、天空上の同じ視野を、3つの異なる近赤外波長で同時に撮像できるものであり、赤外線探査観測用のカメラとしては、現在、世界で最も効率の良いものと言える。この赤外線カメラを観測条件において世界最高水準にあるハワイ島マウナケア山頂にあるハワイ大学2.2m望遠鏡に取り付けて、試験観測を行った。これにより、銀河系内の様々な小・中質量星形成領域の観測を行うことができた。その成果は、国内外の学会で発表するのみならず、広くマスコミにも公表し、2000年11月の読売・毎日新聞およびAstronomy.comや科学雑誌ニュートンにおいて紹介された。さらに、同特定領域研究A01-アで製作した南アフリカの望遠鏡に搭載し、マゼラン星雲の試験観測を開始した。この装置開発および観測の成果はWEBでも公表している(http://www.z.phys.nagoya-u.ac.jp/sirius/index.html)。

研究成果

• [文献書誌] Nakajima,Y.,Tamura,M.,Oasa,Y.,and Nakajima,T.: "A Near Infrared Imaging Survey of the Lupus 3 Dark Cloud"Astron.J.. 119. 873-881 (2000)
• [文献書誌] Nagashima,C.,Nagayama,T.,Nakajima,Y.,Tamura,M. et al.: "Development of SIRIUS…A Simultaneous-Color InfraRed Imager for Unbiased Survey"Proceedings of Star Formation 1999. 397-398 (2000)
• [文献書誌] Tamura,M.: "Exoplanet Photometry and Spectroscopy with HII/L2"The ISAS Report SP. 14. 3-9 (2000)
• [文献書誌] Murakawa,K.,Tamura,M.,and Nagata,T.: "1-4 Micron Spectrophotometry of Dust in the Taurus Dark Cloud : Water Ice Distribution in Heiles Cloud 2"Astrophys.J.Suppl.. 128. 603-613 (2000)
• [文献書誌] Nakajima,T. et al.: "Infrared Star-Count Models and Their Application to the Subaru Deep Field"Astron.J.. 120. 2488-2495 (2000)
• [文献書誌] Tamura,M.: "Submillimeter Polarimetry of Star Forming Regions : From Cloud Cores to Circumstellar Disks"Proceedings of Star Formation 1999. 212-216 (2000)