研究概要 |
高密度プロチウム合金におけるプロチウムの高密度化や高速活性化を図るために、またプロチウムのナノプロセス機能を理解するために、現時点で解明すべき課題はプロチウム拡散やプロチウム占有位置、プロチウム誘起格子欠陥や脆化などである。本研究はこれらの重要課題を理論的・実験的研究により多面的にかつ包括的に解決することを目的とする。このため、飯島、毛利、森永、乾の各研究者は、(1)プロチウム拡散機構、(2)プロチウム配置相関関数の計算、(3)プロチウム占有状態と占有サイトの解析、(4)プロチウム化合物の形成ならびに脆化機構に関する研究を行なった。その結果以下のことが明らかになった。(1)LaNi_<5-x>Co_x-HおよびLaNi_<5-y>Al_y-H合金の水素化および脱水素化挙動を高圧示差走査熱量測定を用いて調査した結果、CoおよびAl置換により脱水素化反応の活性化エネルギーは増大し水素化物相が安定化することを見いだした。(2)Pd-H系状態図の相分離状態を計算し、実験で報告されているものと極めてよい一致を示した。(3)中・低水素圧用PCT測定装置(特許出願中)を用いて、バナジウム系合金の低水素圧領域での水素吸蔵特性を系統的に調べた。一連の実験により、プロチウム化合物(β相(V2H, VH))の安定性に及ぼす合金元素の影響を初めて明らかにした。(4)プロチウム化合物の形成過程は初期ではRim(表面突起)の形成により不均一に起こるが,Rimの密度が増加した後期にはRimに囲まれた領域での母相/プロチウム化合物相界面の移動により起こる.いずれの過程でも,高密度の転位が導入されるが,クラックの形成はRim形成時に顕著に起こり,Rim形成過程が第1吸蔵サイクルでの吸蔵圧が高い原因であることを突き止めた.
|