透過電子顕微鏡によるキャラクタリゼーションを駆使して、水素吸蔵合金の微粉化に伴う構造変化を微視的レベルで観察した。微粉化やそれが関係する初期活性化の機構を解明し、それらを制御する指針を得ることを目指した。ZrMn_2やMmNi_5水素貯蔵合金における水素の吸放出反応に伴う結晶構造、微細組織、欠陥構造の変化を分析電子顕微鏡法および電顕内その場観察法によって調べた。微細構造に関わる基礎的な研究はあまり行われていない。それは、水素と反応した合金の電顕試料作製が困難なためである。これを克服するために、試料作製には集束イオンビーム(FIB)加工を利用した。この方法は水素吸蔵合金の試料作製においても有効であることが確認できた。 C15構造のラーベス相であるZrMn_2系の水素吸蔵合金の微細組織の観察を行った。合金試料は直径約70μmの粉末である。水素化処理した試料では放電容量が改善されることが認められている。水素処理を施した合金では処理を施していない合金に比べて、多数の面欠陥などの欠陥が観察され、場合によってはクラックが形成されていることも認められた。 MmNi_5系の合金では300℃以上水蒸気中で熱処理を行うと、初期活性を合金に付与できる。この合金粉末の微細構造を透過電顕で観察すると、アモルファス酸化膜中に金属ニッケルやコバルトが微細なクラスター状に析出した表面層が形成されていることが分かった。この合金粉末では水蒸気と接触と接触して、酸化反応とともに水素の発生による還元反応が生じていると推察される。 水素の吸蔵放出に伴う微視的な組織変化の観察は、微粉化機構や表面活性層の解明に向けて不可欠であり、電池の高性能化を達成し、信頼性を高めることにも貢献するであろう。この研究での観察方法は電顕によるキャラクタリゼーションの範囲を拡大し、材料の環境効果を調べるためにも有効である。
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