代表的な水素吸蔵合金である、LaNi_<5-x>Al_x、mMmNi_<5-x>Al_xを作成しそれぞれについて、陽電子消滅測定を行ない、(1)十分に焼鈍された各試料には構造欠陥はほとんど存在しない事、(2)陽電子は格子間位置に存在し、プロチウムも同様と結論できる事、(3)水素解離圧と陽電子寿命は、これまで用いられてきたセル体積よりも精度よく対応する事などが明かにした。さらに、従来のセル体積等の指標では整理できなかった合金系、例えばCaNi_5系などについて陽電子消滅測定を実施し、合金開発に新たな指標を得た。また、水素吸蔵・放出ヒステリシスの原因を明らかにするために、プロチウム吸蔵後の試料の陽電子消滅寿命を測定したところ、予期に反して多量の結晶格子欠陥が導入されていることが判明した。陽電子を用いる水素吸蔵・放出現象の研究は、活性化過程や、繰り返し使用における水素吸蔵合金のサブナノスコピックな構造変化の解明に留まらず、プロチウムによる固溶媒体自身の構造変化メカニズムの原子スケールでの解明にも道を開くと期待される。
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