研究概要 |
○伊藤らは,「クラスターユニット間の混合原子価状態」における分子内電子移動速度を赤外吸収線形から決定する研究手法を,4,4'-ビピリジン架橋三核ルテニウムクラスター二量体に適応した.混合原子価中心間の距離が11Å程度に長くなっても,電子移動速度が速い系では,赤外吸収線形にその影響が現れ速度定数の桁を評価することが可能であることを明らかにした. ○佐々木は,μ-オキソ型のルテニウム複核錯体について,ルテニウムの酸化状態が(II,II)から(III,IV)までの各酸化状態におけるμ-ヒドロキソ/μ-オキソのプロトン脱着平衡定数(pK_a),および,μ-ヒドロキソならびにμ-オキソ錯体それぞれの各状態間の酸化還元電位を全て決定した.このような一連のデータは報告例がないものであり,酸化状態がpK_a値に及ぼす影響や,「プロトン共役電子移動」が発現する条件などがこれにより明らかにされた. ○「多サイト反応場の構築とその利用」に向け,鈴木は,かさ高い三脚型四座配位子を含むビス(μ-ヒドロキソ)二核ニッケル錯体と過酸化水素との反応を調べた.低温で生成するビス(μ-オキソ)二核ニッケル(III)錯体,および,ビス(μ-スーパーオキソ)二核ニッケル(II)錯体の構造を決定し,これらが,-40℃以上で配位子に導入したメチル基のC-H結合を活性化して水酸化出来ることを明らかにした. ○芳賀は,長鎖アルキル基を有するルテニウム錯体を用いて,気水界面へ錯体を集積させた「表面錯体」の形成とその機能開発をめざして研究を行った.界面における錯体集合体の構造は,架橋配位子やアンカー配位子の性質に大きく依存することを明らかにした.
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