研究概要 |
本年度には,ンコリニアーなスピン配置を有する分子磁性体をハートリー・フォック(GHF)法および密度汎関数(GDFT)法で計算するためのab initioプログラムの開発を行ない,いくつかの基本的磁性クラスターに適用し,良好な結果を得た. さらに,GHF法を出発点として,励起状態を求めるためにタム・ダンコフおよびRPA計算を行なうプログラムを開発し,磁性クラスターに適用し,実測の傾向を再現することを確かめた. さらに,分子磁性体のバルクの磁化を計算するために遺伝的アルゴリズムを使用する手法を磁化計算に導入し,磁化曲線を理論的に求めることが出来た. 本年度は,まず「分子磁性の理論」というタイトルで集大成(英語40頁)のレビューを出版した.一方,原著論文の方は,密度汎関数(GFT)法を用いてスピン間の有効交換相互作用(Jab)を計算する場合に大切となる種々の方法論上の問題点の解決とその有効性を証明するための計算を行ない,J.Chem.Phys.に2報発表した. さらに,これらの手法を2核マンガン酵素錯体,K_2NiF_4型の銅,ニッケル,マンガンハロゲン(X=Ci,F)4クラスターにおけるJab値の計算に適用し,実験値と良い一致を得た.さらに,同型の銅,ニッケル,マンガン酵素4クラスターにおけるJab値の計算も実行したが,従来の結果を著しく改善する結果が得られた. また,スピンダイナミックスの理論的解析を行うために経路積分セントロイド動力学(CMD)法をスピントンネリングの問題に適用し,その量子効果を明らかにした.さらに量子スピン系におけるスピン不純物の効果とスピン動力学を検討するために,量子マスター方程式を数値的に解くプログラムを開発し,メゾスコピックススピンクラスターを適用した.
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