本研究では、遷移金属クラスターが関係する触媒反応、また、遷移金属を含む系を単位胞とし、それらが1次元、2次元、3次元のネットワーク構造を形成した系について電子構造、幾何構造およびそれらに原因する物性の研究を行った。 白金表面でのエチレンの水素化反応機構については、早くから研究されているが精密なエネルギー計算は無い。我々は、_<Pt7>クラスターを用いたDFT計算(BLYP法)により、水素原子などの他の表面種が存在しない場合は、_<di-σ>型のみが安定種で、_π型の安定性は小さいこと。di-σ型からの1段目水素化反応では、始原系の大きな安定化と引き続く大きな活性化エネルギーに特徴づけられること。第2段階の水素化反応は、より小さい活性化エネルギーで進行すること。表面上に隣接した吸着サイトが利用できない場合、_π型吸着種による反応経路が意味を持つが、このときの活性化エネルギーは低く、反応は安定化領域で起こること等の知見を得た。_<di-σ>型および_π型から得られる生成物は表面エチル基で共通であり、第2段階の水素化反応機構は1つである。実際の表面では、_π型からの反応が主に起きていると考えられる。 平面波展開DFTプログラムのテストケースとして、1次元[PtCl_4(NH_3)_4]系を計算した。この方法では単位胞の構造だけでなく格子定数も最適化できる。この1次元結晶を、eclipsed型とstaggered型の両方について計算を行い比較した。格子定数はどちらも6.2ÅすなわちPt-Pt距離は3.1Åと計算された。計算されたバンド構造と状態密度において、2つの型の間での差違は非常に小さいことがわかる。
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