Ahリセプター(AhR)とbHLH-PASドメインの一次構造が類似した、新規のPASタンパク質、Ahリセプターリプレッサー(AhRR)をクローニングし、性質を調べた。AhRRはArntとヘテロダイマーを形成し、AhR-Arntが結合するXRE配列に結合した。AhRRは分子のC末端側に転写抑制ドメインをもち、ヘテロダイマーを作ることにより、Arntのもつ転写促進活性を完全に抑えた。AhRとArntによる転写活性化系に、AhRRを発現させていくと、AhRの転写活性化能は、AhRRの発現量依存的に減少した。以上の結果から、AhRRはAhRに競争するかたちで、Arntとへテロダイマーを形成し、XREに結合し、AhRの転写促進活性を抑制することが分かった。さらに、AhRR遺伝子を単離し、その遺伝子上流を構造解析した結果、XREが2ヶ所存在した。そこでAhRR遺伝子上流をルシフェラーゼに接合し、培養細胞にトランスフェクションした。その結果、メチルコランスレンの投与により、ルシフェラーゼ活性は誘導された。以上の結果は、AhRRはAhRによって誘導され、発現したAhRRはAhRの活性を抑えるという、負のフィードバック機構が存在することを示している。 ダイオキシンによる奇形誘発作用に関与する遺伝子を見いだす目的で、妊娠マウスにダイオキシンを投与し、胎仔からmRNAを調製した。このmRNAを用いて、マイクロアレイ法で、ダイオキシンで、活性化される遺伝子と、抑制される遺伝子をスクリーニングした。いくつかの興味深い遺伝子が同定され、現在はそれらの胎仔での発現部位、奇形が発生する組織での発現を調べている。
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