研究概要 |
(1) 抗Fas抗体やTNFαを投与すると、マウス肝細胞にアポトーシスが誘導され、劇症肝炎が発生する。この方法をコントロールマウス、Rbトランスジェニックマウスに処置して、生体におけるRb蛋白のアポトーシスに対する効果を検討した。コントロールマウスでは、血清GOT,GPT値の著明な上昇、組織学的には出血、肝細胞変性が認められた。Rbトランスジーンコピー数の多いA系統マウスでは、血清GOT,GPT値はほとんど上昇せず、また組織学的にも出血、肝細胞変性も認められなかった。一方、Rbトランスジーンコピー数の少ないB系統マウスでは、血清GOT,GPT値は中程度に上昇し、組織学的には出血は認めないが、肝細胞のアポトーシス像がある程度観察された。 (2) 化学発癌にはRbトランスジェニックマウス雌とC3H雄のF1(遺伝的背景:B6C3F1)を用いる。F1の内、ヒトRbトランスジーンを持たないマウスをコントロール、トランスジーンを持つマウスを実験とする。肝臓化学発癌プロトコールは以下のようにする。まず、生後6週齢のマウスにジエチルニトロソアミン(DEN)を腹腔内投与し、1週後からフェノバルビタール含有水を30週以上継続飲水させる。ほとんんどのコントロールマウス肝臓では結節性病変が多数検出され、数匹のマウスの肝臓に肝細胞癌が出現した。A系統、B系統マウスとも肝細胞癌は出現せず、また結節性病変も著明に抑制されていた。 以上の結果から、Rb蛋白はアポトーシス抑制、発癌抑制に作用していることか示唆された。
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