家族性大腸ポリポーシスや散発性の大腸癌の80%以上に癌抑制遺伝子であるAPCの突然変異が見い出されており、その発症に大きな役割を果たしている。また、家族性大腸ポリポーシスの進展を、プロスタノイドの生合成における律速酵素であるサイクロオキシゲナーゼを阻害する非ステロイド系抗炎症薬が抑制することが報告されている。この結果は大腸癌の発生にはAPC遺伝子の変異に加え、プロスタノイドが大きな役割をもつことを示唆している。また、国立がんセンターの若林らは、アゾキシメタンによるaberrant crypt foci誘発モデル等の化学発癌の系においてもプロスタノイドが関与することを示唆している。本研究はプロスタノイド受容体欠損マウスとAPCノックアウトマウスとの交配やプロスタノイド受容体欠損マウスでの化学発癌の解析によって、大腸癌の発生に関与するプロスタノイド受容体を同定し、その作用機構を解明することを目的としている。昨年度は、EP受容体欠損マウスを用いてアゾキシメタンのaberrant crypt foci誘発を解析した。その結果、特定の受容体欠損マウスでは化学発癌が抑制されることを明らかにした。また、現在プロスタノイド受容体欠損マウスとAPC欠損マウスとのダブル・ノックアウトマウスの交配を進めている。
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