色素性乾皮症(XP)は、ヒトの常染色体性劣性遺伝病であり、ヌクレオチド除去修復機構(NER)に欠損をもっAがらGの7つの相補性群に分類されている。NERには、少なくとも2つの機構があり、1つはTCR(transcription-coupled rcpair)、他方はGGR(g10bal genome repair)と呼ばれている。TCRは転写の鋳型鎖上における速い修復、GGRはそれ以外の領域での遅い修復機構である。MPC蛋白質は、他のXP蛋白質とは異なり、GGRにのみ特異的に要求される因子である。我々は、XPC-hHR23Bを同定して解析を行ってきた。本研究では、MPC-hHR23B蛋白質の機能を明かにすることにより、GGRの機構を明かにするとともに、TCR機構解析へ向けての足掛かりとすることを目的とした。 NER反応において、MPC-hHR23B複合体および他の因子がどのような順番で損傷DNA上に導入されているのかを明らかにするために、NER反応の競合実験を行った。2つの大きさの異なるプラスミドDNAに、均等に損傷を与えたものを用意し、それぞれ異なる蛋白質と混ぜ合わせた後は、2つの反応系を混合し、どちらのプラスミドが優先的に修復されるかを調べた。MPC蛋白質を欠損しているXP-C群細胞抽出液と、XPA蛋白質を欠損しているXP-A群細胞抽出液間で競合実験を行ったところ、XPA蛋白質よりXPC蛋白質の方が速い段階でNERに関与していることが示された。さらに、精製したXPC-hHR23B複合体と、XP-C群細胞抽出液とについて同様の解析を行ったところ、XPC-hHR238複合体と反応させたプラスミド上での優先的な修復反応が見られた。 上記より、XPC-hHR23B複合体は、損傷の認識に関与していると予想される。そこで、XPC-hHR23B複合体の損傷DNA結合活性について検討した。その結果、N-AAAF、紫外線照射、cisplatin処理したものについて、XPC蛋白質の優先的な結合が見られた。さらに、紫外線照射による主要なDNA損傷の一つである(6-4)光産物を一箇所にのみ導入した基質を作成し、DNaseIワットプリント法を行ったところ、XPC-hHR23B蛋白質が、損傷周辺に結合していることを明らかにした。これらの結果より、XPC-hHR23B複合体が、自身で損傷を認識し、NERの開始因子として働いていることが明らかになった。
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