研究課題/領域番号 |
10151232
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
関 周司 岡山大学, 医学部, 教授 (50032884)
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研究分担者 |
松井 秀樹 岡山大学, 医学部, 教授 (30157234)
サルカー A.H. 岡山大学, 医学部, 助手 (20284060)
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キーワード | 修復酵素 / DNAグリコシラーゼ / APリアーゼ / チミングリコールDNAグリコシラーゼ / エンドヌクレアーゼIII / 結節性硬化症2 / Na^+ / H^+交換輸送体調節因子 / 哺乳類 |
研究概要 |
細胞のDNAは、物質代謝、環境化学物質、放射線等で生じたフリーラジカルでたえず損傷を受け、多様な損傷塩基を生じている。これらの損傷が正しく修復されないと突然変異、発がんにつながる。本研究は、フリーラジカルで損傷されたDNAに多く見られる損傷ピリミジン塩基の修復開始に主役を演じている大腸菌のエンドヌクレアーゼIIIの哺乳類ホモローグ[遺伝子名:nth(cndonucleaseIII)-like1;シンボル、マウスmNthl1、ヒトhNTHL1:酵素名、NTHL1酵素と略記]について研究し、次の成果をえた。1. mNthl1とhNTHL1のcDNAと遺伝子をクローニングし、全塩基配列を決めた。2. 大腸菌で発現したNTHL1酵素を精製してその性状を解析した結果、本酵素が損傷DNAからチミングリコール、ウレア等の残基を除去するDNAグリコシラーゼ活性と塩基欠落部位(APサイト)の3'側に切れ目を入れるAPリアーゼ活性を備えた二価性酵素であることを明らかにした。3. APリアーゼ活性には、NTHL1酵素の212番目のリジン残基が必須で、酵素基質中間体形成に関与することを明らかにした。4. マウスおよびヒトの本遺伝子はともに、その上流に5'-to-5'配置で結節性硬化症2の遺伝子(TSC2)が近接して存在し、NTHL1とTSC2両遺伝子のプロモーターは重なり合っていると推定された。5. 5'RACEの結果から、NTHL1とTSC2両遺伝子はともに転写開始点が複数個あると推定された。6. 両遺伝子とも調べた全ての臓器で発現しており、housekeeping genesと考えられた。7. NTHL1遺伝子の下流には、3'-to-3'の配置でNa^+/H^+交換輸送体調節因子の遺伝子(SLC9A3R2と命名)が存在した。8. 本実験結果にこれまでの報告を参考にすると、ヒトではこれらの遺伝子は染色体16p13.3の位置に、セントロメア側からTSC2、NTHL1、SLC9A3R2の順に配置していると考えられた。9. 得られた成果は、当該修復機構の研究のみならず、隣接遺伝子機能の解析にも、結節性硬化症の多様な病態の解明にも重要と考えられる。
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